方丈記に、似た運命

— 懐かしい古典が、今、蘇る —

あるひは煙にむせびてたふれ伏し、或は炎にまぐれて


【原文】
あるひは煙にむせびてたふれ伏し、或は炎にまぐれてたちまちに死しぬ。或は又わづかに身一つからくして遁れたれども、資財を取り出づるに及ばず。七珍萬寳、さながら灰燼となりにき。そのつひえいくそばくぞ。このたび公卿の家十六燒けたり。ましてその外は数を知らず。すべて都のうち、三分が一に及べりとぞ。男女死ぬるもの数十人、馬牛のたぐひ邊際を知らず。

【訳】
ある者は煙を吸ってしまい、そのまま倒れてしまった。また、ある者は炎に包まれそのまま焼け死んだ。別の者は、身一つで逃げ出したが、家財道具を運び出すことができなかった。こうして都の貴重な財産は、全て跡形もなく灰になってしまった。今回の火事による被害額を考えると想像を絶する。
今回の火事で貴族の屋敷16邸が全焼した。一般の人々の家に至っては焼けた家の数などもう分からない。今回の火事では都の3分の1が焼けたらしい。死者の数は男女合わせて数十人。牛や馬などの家畜に至ってはその被害の数は多過ぎて全く分からない。

【わがまま解釈】
今回は、大火の被害状況について。
まず、被害に遭った者を3パターンに分類している。

・煙を吸って倒れた者
・炎に包まれ焼け死んだ者
・命は助かったが、財産を失った者

結局、被害に遭った者は、命を失うか、財産を失うかのどっちかと言えそうです。
個人の財産だけでなく、国家としての財産も喪失しており、その被害額は見当もつかないとある。
方丈記の最初の方で、平安京を「玉敷き都」などと書いていたけど、全て跡形もなく灰になったみたいですね。

次に、被害の状況について。

・貴族の屋敷が16邸が全焼
・一般の人々の家については焼けた家の数は不明
・平安京の3分の1が焼けた
・死者は男女合わせて数十人
・家畜の被害については不明

ざっとこんな感じで書かれてある。
恐らく、長明さん、一生懸命調査をしたのでしょう。

ところで、平安京の3分の1が焼けたにしては、死者の数が数十人というのは少ないような気がする。
だって3分の1ですよ。
資料にもよるけど、当時の平安京の人口は、10万~20万ぐらいだったそう。
実際は、死者の数は、もっといたんじゃないだろうか。
もしかしたら、カウントした時は数十人でも、後から死者が増えたということもあるかもしれない。

それで、色々調べてみたら、一つ分かったことがあった。
それは、

「方丈記にも、色んな本がある」

ということ。

そもそも方丈記って、鎌倉時代に書かれたふるーいふるーい本なわけ。
で、当時の人々は、それを書き写しながら読んでいる。
すると、これは予想できることだけど、誰かがコピーミスをすることがある。
ところが、そのコピーミスをした本が、そのまま広まることもあったとか。
つまり、いくつか系統があるらしいのね。
で、僕が持っている方丈記には「数十人」とあるけど、別系統の方丈記だと「数千人」と書かれてあるのもあるらしい。

ところで、安元の大火は、当時でも大事件だったと思われる。
それで、方丈記以外にも、安元の大火についての記載がある。
で、暇つぶしに、ちょっと比較してみた。
玉葉については、Wikipediaから。

それで、ここからは雑談。

この安元の大火で「公卿」の家が多数被害に遭ったとあるんだけど、「公卿」って何って思った。
貴族とは違うのか?
公家とは違うのか?

昔、太平記(大河ドラマ)では、石原良純(脇屋義助:新田義貞の弟)と根津甚八(新田義貞)の間で、

石原良純 「顕家卿など、当てにできませぬ」
根津甚八 「顕家卿は、必ず来る」

という台詞があった。
北畠顕家は「公卿」なのか?
そんなどーでもいいことが思い出された。
ちなみに、この時、北畠顕家の役をしていたのは後藤久美子だった。

というわけで、「公卿」について調べてみた。
公卿という字、「公」は「太政大臣」、「右大臣」、「左大臣」を指すらしい。
「卿」は、「大納言」、「中納言」、「参議」、あるいは、これらの地位に準ずる者を指すらしい。
つまり、公卿というのは、昔の貴族制度の頂点にいたグループの人たちのこと。
相撲に例えるなら、「公」が「横綱、大関」、「卿」が「関脇、小結」あたり。
テキトーに書いたけど。

あと、公卿と貴族の違いについて書くと、貴族は公卿よりもワンランク下となるらしい。
具体的に言うと、貴族は、「参議」よりは下で、従五位下の位より高い者となるとのこと。
例えば、長明さんは、従五位下の位をもらっているから、本当は貴族となる。
まー、「鴨長明=貴族」って、あまりイメージないけど。。。

今回はこの辺で。

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